不思議な食感が魅力のカヌレの歴史

"カヌレは表面が黒くてカリっとしているのに、中はしっとりと柔らかいプリンのようなもっちりとした焼き菓子です。日本では1990年代の中頃に大流行して、色々な洋菓子店やパン屋さんの一角で売られるようになりました。フランスのボルドーの名産で、ワインと深い関わりのあるお菓子でもあります。

カヌレの歴史は17世紀にまで遡ります。ワインの生産で栄えていたボルドーでは、海外にも輸出できるようにさらに品質を良くするために力が入れられていました。ワインの質を良くするためには清澄と言われている作業が行われるのですが、この際に大量の卵白を使用することになります。その製法は現在でも行われていますが、樽の中でワインが熟成された後にメレンゲを混ぜて二ヵ月ほど寝かせることで、不要な物質をメレンゲに付着させて取り除くのです。そして大量に卵白が使われるということは、同じだけ卵黄が余ってしまうことにもなります。

そこで、卵黄をたくさん使って作るカヌレが誕生しました。カヌレを専門に製造する工場もできて、ボルドーでは大きなカヌレブームが起こったといいます。しかしその後は残念ながら廃れてしまい、再び復活したのが20世紀になってからです。

カヌレが誕生したのは、ワインの名産地であるボルドーであるからこそなのがわかります。今でもボルドーの名産でブランド化もされているカヌレは、ボルドーの街を歩くと多くの専門店を目にすることができます。カフェでコーヒーを飲んでいても、おまけに小さなカヌレが付いてくることが珍しくありません。

そんなカヌレの作り方は簡単です。牛乳を沸騰させた鍋にバニラとラム酒とバターを入れて、砂糖に薄力粉、それに全卵と卵黄を加えた生地を半日以上寝かせます。その後蜜蝋を塗ったカヌレ型に入れてオーブンで焼き上げます。

日本で売られるようになってから、見た目のインパクトから興味を持って口にしたかたも多いでしょう。そして食べてみるとカリッとモチッが同居した不思議な食感に、たちまち大ブームになりました。

今でも根強い人気のあるお菓子です。"